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熊本家庭裁判所三角支部 昭和31年(家イ)21号 審判

申立人 山田ツギ(仮名)

相手方 南正(仮名)

主文

相手方は、申立人か、相手方の子であることを認知する。

理由

申立人は主文同旨の調停を求め、その理由として、申立人の母山田ツギと相手方南正は○○郡○○村居住の中村正、同所中山春子の両人の媒酌により昭和一二年四月○日結婚し、翌昭和一三年二月○○日離婚したが、その間婚姻届未済の儘同村大字○○○○○○番地の申立人の母宅に同棲した。

申立人は相手方が母と別れてから約一ヶ月して、昭和一三年三月○○日申立人の母と相手方間の子供として出生したが、父母の婚姻届が為されていなかつた為已むなく母の私生子として、その出生届が為された、その後申立人の母は相手方に対し申立人を認知して貰う為度々相手方に交渉したが、相手方は事実を是認し乍ら、その手続を実行しないので本件申立に及んだと述べた。

昭和三一年一一月○日午前一〇時、同一二月○日午後一時に開催した、本件についての調停委員会の席に於ても申立人代理人は以上の如き事実を陳述したが、これに対し相手方は、申立人が自分の子であるとは之を認めるが認知すれば現在の自分の家庭の秩序を破壊する結果となるから、絶対本件の調停には応ぜられないと述べた。

調停委員会は更に相手方を諭し種々調停を試みたが、相手方が意を翻さぬ為主文同旨の合意の成立を見るに至らなかつた。

よつて当裁判所は必要な調査を為した結果申立人代理人、相手方の各供述及び証人中村正、同中山春子の各証言を綜合すると、申立人が相手方の子である事実は明かであるから、調停委員の意見を聴いた上、家事審判法第二四条第一項に則つて主文の通り審判する。

(家事審判官 堀部健二)

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